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PCBgogo で基板を作った

PCBgogo さんからプリント基板をご提供いただきました。作った基板の用途や製造品質について紹介します。基板提供のきっかけは、PCBgogo の広報担当の方が私の記事 CH32V003 マイコンの PA1 や PA2 が使えないときに確認すること by uchan | elchika のコメント欄にで連絡をくださったことです。技術記事を継続的にアウトプットしておくと、いいことがありますね。

斜めから見たX86-USBCOM-1基板の裏面

USB-UART-USB 変換器

今回製造を依頼した基板は、USB-UART-USB 変換器の基板です。USB を UART に変換する一般的な変換器 2 つを向かい合わせにくっつけたような製品で、両端を 2 台の PC に繋ぎつつ、シリアル通信を行うことができます。

想定する用途は Linux のシリアルコンソールへの接続です。普段は SSH でログインするタイプの、画面やキーボードなどが接続されていない Linux サーバーがあるとします。ネットワークの設定などを間違えると、SSH でログインできなくなりますよね。そんなときでも、シリアルコンソールであればログインできます。

そんなシリアルコンソールに、RS-232C 端子が付いてない PC(最近の PC はほぼ付いてない)から接続するには、USB シリアル変換器を使うのが常套手段です。しかし、Linux サーバー側にも RS-232C 端子が無い場合に困ってしまいます。そこでこの USB-UART-USB 変換器を使うことで、USB 端子同士でシリアルコンソールへ接続できるというわけです。

BOOTH で基板や組み立てキット、完成品を頒布しています。USB-UART-USB変換モジュール X86-USBCOM-1 - Hello uchan world - BOOTH

完成した基板

これは PCBgogo で作ってもらった基板の写真です。

PCBgogoで製造したX86-USBCOM-1基板の表裏

大きさは 20mm × 30mm です。層数は 2 層、両面基板です。表面処理は基本の HASL ではなく、無電解金メッキ(ENIG)で仕上げてもらいました1。今回、初めて無電解金メッキ処理で基板を作りましたが、HASL より表面実装部品のはんだ付けがしやすくていいですね。HASL はパッドが少しこんもりするので部品がズレやすいのですが、ENIG は表面の高低差が少なく、位置決めが楽な感じがしました。

USB Type-C コネクタは秋月電子で取り扱っている「USB Type-Cコネクタ 基板用」(通販コード C-14356)を使っています。このコネクタは、パッドと取り付け穴がとても近いです(下図)。

X86-USBCOM-1基板のUSB端子取り付け穴と周囲のランドが近い

厳密には PCBgogo の基板製造仕様 に違反していると思います。しかし、特に指摘を受けることなく製造されました。できあがった基板を良く見ると、パッドの穴に近い部分が斜めにカットされたような形になっています。

PCBgogo のエンジニアが修正してくれたのかと思ったのですが、違うかもしれません。反対側の USB コネクタも同じ形になっていれば意図的に修正したと判断できますが、そうではなく、斜めのカットが小さめでした。仕様に違反しているため、ベストエフォートで製造された結果、左右で異なる形になったのでしょう。

私の提出したデータが基板製造仕様に違反しているにも関わらず、拒否されず、小さな変更でなんとか製造していただけたのは良かったです。できあがった基板は特に問題無く組み立てられましたし、動作も問題ありませんでした。

組み立ての難易度

この基板を組み立てるときは、こんな感じで、ルーペで確認しながら組み立てを行いました。

X86-USBCOM-1基板のはんだ付け品質をルーペで確認する様子

表面実装部品を多用しているので、全体的に難易度は高めかと思います。特に難しいのが USB Type-C コネクタのはんだ付けでした。最初は端子間がブリッジしてしまい、なかなか解消できず、苦戦しました。USB Type-C コネクタの端は垂直になっており、そこに小さなリードが出ているだけなので、はんだごてを正しく当てるのが難しかったです。

次点で難しいのが CH340E でしょうか。普通の IC ですが、単純にピンピッチが狭く片側 5 ピンもあるため、それだけ難易度が高かったです。意外に大変だったのがチップ LED です。抵抗やコンデンサはピンセットでつまんではんだ付けするだけで楽なのですが、LED は過熱により破損しやすく、大変でした。実際、はんだ付けに手間取ったとき、表面をピンセットで触ったら樹脂が動いて破損したことがありました。手早くはんだ付けしなければなりません。

PCBgogo の感想

PCBgogo の良いと思った点

  • 日本語でやり取りできる
    • 中国メーカーなのですが、jp ドメインの日本語版サイトがあります。
    • 広報担当の方と日本語で普通にコミュニケーションできました。
  • 製造と輸送が速い
    • 9/5 午後に製造が開始され、9/7 に発送、9/10 に手元に届きました。
    • 国際配送は OCS で、国内は佐川急便でした。
  • 製造品質が良い
    • 他メーカーと比べたわけではありませんが、私の用途では十分な品質で製造してもらえました。
    • 仕様違反のデータでも拒否されず、実用上問題のない範囲の修正にて製造されました。

PCBgogo のイマイチと思った点

  • 製造が JLCPCB より高額
    • まあ、比較対象の JLCPCB が異常に安いというだけなのですが……
    • 20mm × 30mm の両面基板を 5 枚の場合、PCBgogo が $5、JLCPCB が $2 です。
    • 表面処理を ENIG にすると、PCBgogo は $44、JLCPCB は $17.6 です。
  • 輸送も JLCPCB より高額
    • PCBgogo も JLCPCB も OCS が選べますが、JLCPCB の方が圧倒的に安いです。
    • JLCPCB の OCS NEP が、なぜ $1 で輸送してくれるのか、本当に謎です。PCBgogo で OCS を使う場合、$16 ほどかかります。

今回 PCBgogo さんから提供の申し出があり、利用させていただきました。結果として、製造品質や配送時間は満足できるものでした。

日本語でやり取りできることもストレスが少なかったです。プリント基板を作ってみたいけど、英語での基板発注は敷居が高いなと思っている方は、PCBgogo が向いているかもしれません。過去、知り合いの学生さんがロボコン用基板を PCBgogo に発注していましたが、特に問題なく製造してもらっていたようです。



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作成:2023-09-18 16:58:23

最終更新:2023-09-20 09:48:53